【日本の美容師は本当に世界一か】ヘアスタイリストとクリエティブ業界

Hair&Make by Yoko, assistant Nobukiyo

Hair&Make by Yoko, assistant Nobukiyo


 
アメリカ生活約1年になります。アメリカ生活をしている日本人なら誰もが悩みとして抱える「アメリカでのヘアカット」。
アメリカのヘアサロンは、普通は日本みたいに髪を洗ってくれません。ハサミの使い方は日本みたいに上手くないです。

“すく”というテクニックを知らなかったりします。日本で言うと、QB HOUSEみたいな感じのところがたくさん(もちろん値段に寄りますが)。
ファッションにうるさい僕が11ヶ月の生活の中で考え続けていたテーマ、「日本の美容師は本当に世界一か」について考え、さらにそこから日本のファッション雑誌の商業的側面、アメリカのクリエティブ業界の側面にまで話を広げていきます。

【シアトルの日本人美容師事情】

シアトルはアメリカでも有数の日本人が多い都市。日系サロンも10店舗くらいあります。そんなシアトルにはイチローの奥さんが経営していると言われているヘア・ネイルサロンもあったり。en salon. このサロンは僕も何度かお世話になりました。シアトルでは満足できるレベルです。日本で言ったら大体IMAGE Aよりちょい上くらいのスキルかなと。メンズカット5,200円くらい。青山で経験を積んでいた方。でもここ、スタイリストが1人しかいないんです。となると、予約が基本2〜3ヶ月待ち!!困ったものです。

つまり、シアトルで日本人が満足できるスキルを持ったヘアスタイリストが足りていないということ。ここから、あるアイディアが生まれました。

“日本の美容師は世界トップレベルのスキルをもって言われているのに、長時間労働・薄給で仕事は大変。だったらその人たちの海外進出をサポートするサービスがあればいいのでは?”

でも、僕がやるにはリソースが足りなかったり、あまりワクワクしなかったのでやりませんでした。ファッションを楽しむという概念がほぼ無いシアトルにシアトルに日本のお洒落美容師を呼んでも、僕と同じように辛い思いをさせてしまいますし。そうなると今度は、シアトルじゃない他のアメリカの都市はどうなんだ?という疑問が生まれました。僕はサンフランシスコでも1ヶ月生活をしました。そのときも、代官山レベルの日系ヘアサロンはあまりないなという印象でした。
ここまでは、日本の美容師はアメリカで大活躍出来るだろうと考えていました。
では世界トップのファッション都市ニューヨークはどうでしょう。

 
Hair&Make by Yoko, Hair by Koshi,Hando
 

【ニューヨークの日本人美容師事情】

一方、ニューヨークは日本人美容師が十分居るようです。ハウスメイトに1人日本人美容師で、大阪からニューヨークへ挑戦しに来ている方がいらっしゃいます。その方のお客さんは9割日本人、仕事場でも9割日本語だそうです。日本人美容師からしたら大分仕事しやすい環境でしょう。

ファッションの世界の中心地ニューヨークで活躍する2人の日本人にカットしてもらいました。その2人にカットしてもらっている間、「なぜニューヨークでやろうと思ったのか」「日本人美容師は世界一か」について話しました。その内容をシェアします。

※あくまで、この二方のオフィシャルな見解ではなくただの気楽な世間話なので、お二人はこのトーク内容に責任を負いません。

 

Hair KUWAYAMA, Tsukiさんのお話

Tsukiさんは青山のAntiという人気ヘアサロンで経験を積まれて、ニューヨークへ挑戦しに来たそうです。

なぜニューヨークで挑戦?:
日本のヘア業界にはもう満足したから。一般のお客さんを切るより、これからは広告とかのクリエティブワークの方の仕事に注力したくて。

日本とニューヨーク、ヘア業界はどう違う?:
日本は雑誌が力を握っている。chokichokiみたいな雑誌の特集テーマに合わせて作ったへアスタイルを載せてもらえば、お客さんが来る。それが主要なマーケティング。ニューヨークは違う。みんな似合う髪型、求める髪型が千差万別。chokichokiみたいな雑誌はない。実力で勝負するんだ。
日本の雑誌は商業的過ぎて、答えがもはや決まっている、”カワイイ”を作れば良い。一方、ニューヨークではヘアに限らずクリエイターの力が強い。消費者に媚びるんじゃなくて、ヘアスタイリスト自信が本気でかっこいいと思ったものを作っている。だから、広告とかのクリエティブワークをやるんだったらニューヨークでの仕事がむちゃくちゃ面白い。オススメの雑誌はW magazine”Interviewだね。

日本人て他のニューヨークのサロンで働いている人より上手い?:
日本て、さっき言ったみたいにある程度ヘアデザインの答えはもう既に決まっているみたいなところがある。だから、クリエティブでアーティスティック、新しいヘアの作品を作る分野においてはニューヨークのクリエイターの方が上だね。

ヘアスタイリストといっても、一般のお客さんに切る仕事と、広告などのクリエティブ関係の仕事と2種類に分けれられるわけですね。
ニューヨークは世界トップの広告の街ですから、たしかに後者の分野ではニューヨークの方がいい環境なのでしょう。

 

SHIZEN, Yokoさんのお話

Yokoさんはあの有名店SHIMAで経験を積み、その後ニューヨークで自分のヘアサロンをオープンしたそうです。それがSHIZEN 。そこで人気が出て、日本人のお客さんが日本に帰ってからもYokoさんのヘアサロンで切りたいという要望が多かったため、THE OVERSEAをオープンしました。これまた有名店です。そして、SHIZEN1号店の人気が続き、お客さんを対応しきれなくなったため、Brooklynに2号店を昨年オープン。なぜ成功したのか聞いたところ、「実力。口コミ。」だそうです。実際めちゃくちゃ上手いので、NY在住日本人の方にはオススメです。

「日本では”カワイイ”を作れば良い」という意見に対してどう思う?:
当たってると思う。日本人は顔や髪のベースが基本一緒だから、似合う髪型の幅もそれなりに決まってる。雑誌の力が強いし、マーケティングのために”モテ髪”を作ることが求められる。でも、雑誌のモデルを見せられて、「この髪にしてください!」と言われた髪型をその人に似合うようにアレンジして作り上げるスキルも相当難しい。だから、その力で言えば世界一と言えるかも。でもその力は日本人以外のお客さんに対して、通用しないよね。更なる訓練が必要になってくる。
ニューヨークではいろんな人種の人がいる。女の人はゴージャスを求める。ベースが全然違うから、ゴージャスにもいろいろある。”お客さんの為のベストな髪型”の幅が広いから、難しいね。使うテクニックも全然違うし。

ニューヨークにはカットだけで4万円もするヘアスタイリストもいるとか?:
あれはもはやエンターテイメント。スキルが凄いというより、お金持ちを気持ちよくさせるための演出力。ハサミひと入れするだけにアシスタントを何人も使って、カットが終わったらソファーでくつろぐらしい。

 

【まとめ】

ヘア業界も大まかに分けて2つあります。世界一の定義も、それぞれ違います。一般のお客さん向けの仕事と、広告等クリエティブの仕事。日本での一般のお客さん向けの仕事は、お店自体のマーケティングとして、雑誌に載っけて”カワイイ”押しでやる。そのために、流行を意識し、かつ注文に応える力が必要。一方、広告等クリエティブの仕事は、美容師自身のイマジネーション、クリエティビティをフルに発揮する。日本だったら、大抵海外のクリエティブ雑誌を参考にする。だからそっちの仕事がしたかったらニューヨークに来たほうがずっと面白いということでしょう。ニューヨークは、街自体がクリエティブに溢れています。I♡NYロゴなんかがわかりやすい例ですよね。Arts for Transitといって、公共の交通機関にもアートがたくさんあります。こういうクリエティブを大事にする街になるためには、educationが大事だなって思います。市民への、消費者へのeducation。

 
Sophie-Blackall_Subway-Art1
2008gall-m
 
僕はカットをお願いするときに、「あなたが思う、僕に似合う一番かっこいい髪型にしてください。好きなブランドはPhillip Limです。雑誌はHugeを読みます。」と伝えます。これは美容師にクリエティビティを求めているからです。僕のような一般人には注文できないような、ベストでユニークな髪型を求めているからです。雑誌の流行なんて気にしないような美容師に増えて欲しいものです。

ちなみに、最近僕の周りで話題になった、N MAGAZINEというクリエティブ雑誌があります。明治大学の学生が、日本の雑誌の商業性に対して「つまらない。」「もっと日本のクリエティブの力を成長させたい」という思いで作ったそうです。応援したいです。

僕もアメリカのクリエティブエージェンシーでインターンをしてみて、日本はこれからデザイン力・クリエティブ力で世界と戦って行くべきだという仮説をもちました。この仮説を元に、2013年、大学生の残りの1年の全てを懸け、デザイン・クリエティブ教育を推進するためのプロジェクトの構想が生まれました。現在水面下で準備を進めています。これについては後々公開します。お楽しみに。
 
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About oguchon

Communication Planner at a Branding Agency in Tokyo.

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